これが、心臓が動くということ。

 

"こんな話を知っているかな?

全身に猛毒を宿した少女と、ある男の恋物語。"

 

 

黒いハット、黒い服を身に纏った紫の髪の男は

本を片手に物語を語り出す。

 

男の周囲の人々は舞台の真ん中、

男の後ろにいる"何か"に手を伸ばしている。

 

 

そんな不思議な空気、

現代とはかけ離れた異様な空気から始まる物語に

線と線が繋がり回りだした歯車を目の前に

ここから何が始まるのかと息を呑んだ日から4日。

 

無事に東京千秋楽も終わったということで、

ミュージカル「Code:Realize〜創世の姫君〜

の感想を綴っておきたいと思います。

 

大阪公演をまだ残していますがネタバレせずに書くとかいう器用なことはできないので、これから観劇予定があり内容を知りたくない人はここで戻ってください。

 

そして、私は長谷川愛さんのファンです。

彼女が出演するからこの舞台を観に行きました。

元々アニメなども見ないので、彼女の出演が決まるまで恥ずかしながらこの作品の存在も知りませんでした。

加えて2.5次元の舞台も詳しくありません。

(2.5次元らしきものには日頃から触れ合っているけど)

原作は今勉強中ですが、記憶が鮮明なうちに感じたことを残しておきたく、先にこちらを書くことにしました。

原作を知っている方、作品のファンの方、他の出演者さんのファンの方の中にはもしかしたら違和感や疑問、不快感を感じる方もいるかもしれませんが、あくまで一個人の見解、感想ということでご了承いただければ幸いです。

 

 

 

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約2ヶ月前、彼女が出演決定のお知らせをしたとき、

私は初めて「Code:Realize」の存在を知りました。

原作を見るか否か悩んだ挙句、やめました。

 

 

私は過去に長谷川愛さんの出演する舞台を

2つ観に行きました。

 

マクロス ザ・ミュージカルチャー

「音楽劇 千本桜」

 

どちらも原作をよく知らないまま観劇しました。

 

私の中のソニア・ドセルは、私の中の紅音鳴子は、

長谷川愛さんが演じる姿がいい。

そんな思いがあったから。

 

そして、まっさらな、何も知らない状態で作品に触れ、私の中では作品に登場するキャラクターはアニメでなく出演者の方々によって創り上げられ確立され、その上で作品へ思いを馳せたり、ストーリーを推察する、そんな観劇の仕方が大好きで、今までもそうしてきたから。

 

だから今回も、

私の知る「Code:Realize」はこの舞台で、

私の知るカルディアは長谷川愛さんが演じる女の子に

しようと決めていました。

 

 

 

 

 

"どんな話かって?気になるかい?

なら教えてあげよう。

それはねー"

 

紫の髪の男の語りが終わり、

 

 

私は誰?

私は何?

私はどこから来たの?

私はどこへ行くの?

 

 

スポットライトに照らされて歌いはじめるカルディア。

光を失くした目、無機質な表情。まるで人形のよう。

孤独、悲しみ、懺悔、諦め、自分への憎しみ、絶望…

全てを自分の中に塞ぎ込め、

何も感じない、というより感じないように

全てをシャットアウトしてるカルディアを前に

開演数分にして私は既に長谷川愛の存在を忘れていた。

(もちろん今までも役に彼女の面影を感じることは皆無に等しかったけど、今回は今までとはまた違う感覚で、それについては最後に述べたいと思います。)

 

 

 

 

感想書きたいとは思ったんだけど、ストーリーに沿って順番に書いていくとかは難しくて出来なさそうなので()ここからはキャラクターごとに書いていきます。

 

【アルセーヌ・ルパン】

世紀の大泥棒であり泥棒紳士であり正義の味方。

 

動き?立ち振る舞い?がすごくスマートだなって印象。あと知り合いに言われてから気づいたけど意外に身長なかった…!でもそれだけ動作とかで大きく見せることができる人なんだなって感動もした!

最初はカルディアにやたら触るなとか距離近いなーって印象しかなくて、ちょっと女たらし?的なキャラクターなのかなって思ってたけど、話が進んでいくうちに触れたもの全てを溶かしてしまう毒を持ってるカルディアへの優しさなように感じてきて。毒を持っている、そのことがカルディアが自分を閉ざしている原因だとルパンは最初からわかってた。だから服の上からなら躊躇わずに触れるよ、そんなことでは自分はカルディアを恐れたり遠ざけたりしないよ、その思いを1番わかりやすくカルディアに伝えるための行動なのかなって感じた。

 

怪物、ホロロギウム、アイザックの娘…

カルディアを取り巻く、カルディアを苦しめているこの事実たちを全て取っ払って、カルディア自身と向き合う覚悟がある、それを言葉と行動で1番わかりやすく示してたのがルパンな気がした。

 

「心臓がなんだってんだ。今こうしてお前は俺の前に存在してる。」

「男も女も好きな人に触れたとき心は動き出す」

「人間は最初から人間なんじゃない。誰かを心から愛したとき、初めて人間になる。それが怪物と人との違いだと俺は思うぜ?」

(セリフは多分若干違う)

 

自分が怪物であることにずっと引け目を感じてたカルディアを1番傍で見ていたルパンはカルディアの心が動いていたことをちゃんと知っていた、カルディアのことを怪物だなんて思ってない、その事実がカルディアをもう一度立ち上がらせたんだろうなぁ。

あのときカルディアを攫ったのがルパンでなければ、

ホロロギウムを吸い取られたあのときにカルディアの命は終わってたんだろうな。

 

あのときカルディアのドアをノックしたのがルパンで良かった、そう思う。

 

あと一瞬だけ出てきたルパンの過去。

「俺が1人前だったら…」という言葉。

いつもはおちゃらけてて、自信に満ちているルパン、

だけどあの日の後悔はきっとずっとついて回ってて、

仲間割れを止められなかった、大切な先生を守れなかった、あの後悔があるからこそ、

「失敗する確率は常に0の泥棒紳士」になる必要があったんだろう。

 

だから、カルディアがフィーニスに攫われたときも、

満身創痍でも助けに行こうとした。そしてそれを止めたヴァンに怒った。なぜあのとき天球儀を撃つのをやめたのか。

でも、あのときヴァンが引き金を引くのを躊躇った理由を聞いて、自分は大切な人(カルディア)を守ろうとした、でも仲間は大切な人の大切なもの(ルパンに触れたいというカルディアの願い)を守りたいと思ってくれていた。自分が叶えようとしていた願いを仲間も叶えようとしてくれていた、それは仲間割れの末の悲しい過去を背負ってるルパンにとってすごく嬉しかったんじゃないかな。

あのシーンで後悔、怒り、驚愕、決意と感情が動いていくルパンの表情がそれまでのルパンとは一味違くて鳥肌たった…!

 

カルディアに言った「俺を信じろ」は自信というよりは覚悟だったような気が今ではする。

 

 

【インピー・バービケーン

天才技師で大発明家(だっけ?)

 

実はインピー役の鷲尾修斗くんの舞台を過去に1回だけ見たことがあるんだけど、そのときとは別人すぎてまず舞台俳優の役の振れ幅に驚いた…!

あと原作勉強しはじめてわかったけどインピーが本当にインピー。Twitterに同じような感想書いてる人たくさんいたけど納得。私的に1番忠実に再現されてた。

 

インピーはカルディアのことが大好きで、いつもふざけてて空気が読めなくて。でもその明るさでみんなを動かすというか、天才技師といわれているけどインピー自身がみんなを連れていく飛行船やオートモービルそのものだったような気がする。

 

インピーは客降りも多かったけど、ライトが当たっていないときでも、そして自分がメインじゃないときでも常にインピーを崩さずにいた。他の人が違うって訳じゃないんだけど、多分あの人は劇場に入った瞬間から出る瞬間までインピー・バービケーンとして生きているんだろうなと感じる、そんな振る舞い方だった。

 

そしてホロロギウムの元となったジクテリウムを作ったのが自分だとフランが告白したシーン。

知り合いに教えてもらった、舞台では省略されている原作のインピールートで描かれているインピーの過去。それを知った上で注目したそのときのインピーの表情は、それまでのインピーからは想像もつかないくらい暗くて。頭を殴られたような、深い悲しみに包まれたような顔。混乱と怒りと悲しみと全てが混ざったような顔。

 

あの表情を見たとき私は息を呑んだ。

 

私がインピーの立場ならフランのことはきっと許せない。今すぐにでも問い詰めたい。同時に、ずっと一緒に過ごしてきた仲間のフランが、自分がずっと憎んできた相手だなんて信じられない。信じたくない。

そんな相反する思いがあるのは想像はつくけど、それを言葉もなしに、しかも言われなければ気づかないような端の位置で表現してるのがすごかった。でもきっとあの空気はあのシーンに絶対必要だったと思う。

 

そして、その事実を知った上で、その後の戦闘シーンでフランを庇ったインピーに泣きそうになった。フランを見捨てるという選択肢を選ぶことは容易にできたけど、インピーはそれをしなかった。インピーは過去の憎しみと決別した、そしてフランを救うことにした。その決断にとても感動した。

 

あとそんなことがあったのにも関わらず月に行くことを夢見てる理由をフランにだけ話してるのも泣いた(泣いてない)

 

 

【ヴィクター・フランケンシュタイン

元宮廷錬金術師・筆頭研究官。

 

笑いをとるキャラは既にインピーがいるけど、「私の裸が見たいの?」って聞かれるシーンのフランはついついクスッと笑ってしまう。

 

フランはカルディアの体を最初に見たとき贖罪、と言っていた。最初は指名手配と関係があるのかと思ったけど、自分が作った発明品、ジクテリウムがホロロギウムの元になっていた。そのせいでカルディアの体には毒が宿っている、怪物と呼ばれている、ルパンに触れることもできない。

かつてジクテリウムの使用をヴィクトリア女王陛下が許可したことで大勢の人を死に追いやった。それだけではなく新しい仲間、カルディアにさえ影響を及ぼしていた。自分はカルディアが幸せになる邪魔をしている、そんな思いを抱えながら贖罪という言葉を口にするフラン。

きっと彼はこんなことのために錬金術師になったんじゃないんだろうと考えたら胸が痛くなった。

 

そしてインピーが師匠のおじいさんが科学は夢と未来を与える、月にだって行けると言ってたという話をキラキラした瞳で語ってる姿を見つめるフランの優しいけど悲しそうな笑顔もすごく心に刺さった…

 

 

【サン・ジェルマン】

フランスにて伯爵の位を授かるもの(ゲームの受け売り)

屋敷の主。イデア使徒

 

原作を知ってわかったけどサンも声が本当にそっくり。あと笑い方が上品なところとか、常に同じトーンで話し続けるところも。アフタートークの話も知り合いから聞いて本当に研究したんだろうなぁと感じた…いい子…(?)

 

でも、だからこそ、カルディアを殺そうとする場面では声のトーンが少し変わって、ほんの少しの変化なのに急にあのシーンで恐怖を感じた。

でもあそこで殺さずに毒薬を渡し、あとはカルディアの選択に任せたところの、イデア使徒としてカルディアを排除するという"正義"と、仲間としてカルディアと生きたい、望みを叶えてあげたいという"情"に挟まれて葛藤するサンがすごく切なかった…。

毒薬を渡したときの、そのあと明るい未来をと言ったときのサンの気持ちを考えると胸が張り裂けるとはこれかと思った…。

 

アイザックの手に落ちる前に自分が、そんな思いで正義を貫こうとしてたサンが結局正義を捨てたのは、

「宿命に抗うのもまた宿命」

そう言ってカルディア達を先に行かせたのは、

 

きっとサンが人間だったから、なんだと思う。

 

 

【エイブラハム・ヴァン・ヘルシング

人間兵器。吸血鬼戦争の英雄。

 

かっこよかった。とにかくかっこよかった。(語彙力)

銃捌きが尋常じゃなくやばかった(語彙力)

 

自分の家族を人質にとられ、救うために自分を慕ってくれていた吸血鬼一族を殺した。しかし、吸血鬼一族に情をもったばかりに家族を救うことは結局できなかった。

大切な人を守るためにとった行動で、結局は大切なものを全て自分の手で殺めてしまった。

その事実と後悔を抱えながら、ヴァンはどんな気持ちで吸血鬼戦争の英雄という異名を聞いていたのだろう…

 

ヴァンはぶっきらぼうで手が早くて口が悪くて、

でもきっとこの過去があったから、誰よりも痛みに敏感な人。

 

だからルパンが傷を負ったときに傍にいた。

ルパンに「お前の大切な人はまだいるだろう」と諭したんだと思う。

 

そして、天球儀を撃たなかったのはカルディアの願いを叶えるためだけじゃなくて、フィーニスを殺したところで復讐にはならないと気づいたからなんじゃないかなとも思った。

フィーニスを撃っても痛みや悲しみ、後悔は消えない。むしろ新たに生むだけ、そう気づいたんじゃないかと思ったし、それを教えてくれたのはルパンやカルディア達なんだろうなとも考えた。

 

「お前らのために闘うことに私になんのメリットが?」と言っていたけど、復讐のためだけに銃をかざすのは意味がないと気づいたことが1番の収穫だったような気がする。

 

あとはもうとにかくかっこよかった(2回目)(語彙力)

 

 

…長すぎて私が飽きてきた()

でも全員書かないわけにはいかないので(謎の使命感)

 

 

【エルロック・ショルメ】

探偵。この物語を語る者。この物語を紡ぐ者。

(こんなこと歌の中で言ってた気がする)

 

最初はよくわからない位置づけだったけど()

原作を知らない身としてはこの人の説明はストーリーを理解する上で重要だったなと感じる。

 

あと「物語も佳境に〜」って言ってからの展開が目まぐるしすぎて後半がめっちゃ長く感じた…!

 

2.5次元舞台なのに映像を使わず、セットも全て人力でやるのがこの舞台の特徴でもあったみたいだけど、人力ゆえの限界もあったと思うし、だからこそショルメの語りがあることで、視覚と聴覚の両方からの説明は効果的だったのではと思う(とてつもなく上から目線)

 

そういう人(語り手)として見てたから

列車のシーンで探偵で、しかもルパンと戦いだしたのはびっくりした…!

そして英国兵側だったのもまたびっくりした…!

 

個人的にはショルメが英国兵側だと知って、吸血鬼戦争とかの一件があって、正義とは何かわからなくなって、正解を追い求めて探偵になったのかななんて考えてたんだけど(想像しすぎ)

そうでもなさそうなので早くショルメルートやります()

 

あとなにより歌が上手かった…!

点と点は繋がり線になる、線と線は結ばれ歯車となる、歯車はやがて動き出すって歌があの声で歌われることで臨場感というか緊張感が増した気がした!

 

 

【フィーニス】

カルディアの弟。黄昏の長。

 

今回の舞台で1番衝撃を受けた人かもしれない…!

今まで舞台を見てきたこと何回もあるけどここまでのヒールなかなか見たことない。

ただの悪役じゃなくて、とてつもない狂気を感じた(褒めてる)しかも回を重ねるごとに狂気が増してて千秋楽とか最早恐怖でしかなかった(褒めてる)

あの甲高い笑い声もやばい(褒めてる)

 

初日は語尾が常に上がってるというか、不気味な感じの話し方がほとんどだったけど、段々と低い声も交えてきてたことで更にフィーニスの持つイメージを恐怖に染めてたなって思う。

知り合いとも話してたけど撃たれて生き返ったシーンでヴァンに言う「そうだよね!?自分の手で殺したいよねぇ!?」の言い方が尋常じゃない恐怖感だった(何度も言うけど褒めてる)

 

カルディアの頭の中で聞こえてる声のところの「姉さんがみんなを不幸にする。姉さんが大切な人を殺すんだ。」も言い方からもうカルディアを追い詰めてる雰囲気を醸し出してて、舞台俳優とか全然詳しくないけど、今回の舞台の中で特にフィーニスは適任だったんじゃないかと思う。

(ちなみに中の俳優は本当はあんな子じゃないらしい)

 

そんな悪役に徹したフィーニスだったけど、

要所要所で「必ず役に立つから」「僕を愛して」とアイザックに向けて叫ぶその声が痛々しくて、両親から愛されたい、たったそれだけの思いがフィーニスを変えて、あそこまで追い詰めたんだと思うと苦しかった。

 

過去の回想シーンで「姉さん」と無邪気に呼ぶ笑顔のフィーニス、

カルディアの手を離す直前「姉さんを起こすのはいつも父さんで。僕は遅い!って言うんだ…」と昔の話をするフィーニス、

 

あのフィーニスも確かに存在してたんだと思うと本当に胸が締めつけられる。

フィーニスが望んだのは特別なものではなく、ごく普通の幸せ、でもそれすらも手に入れることが出来なかった。彼がホムンクルスだったが故に。彼の細胞が残ってなかったが故に。

(これも舞台では省略されているフィーニスの生い立ちを少し教えてもらった結果、しんどさ倍増した)

 

「私があなたを愛するから」「一緒に生きよう」「死んじゃダメ」「あなたは私の大切なたった1人の家族」

同じように愛を求めていたカルディアに、大切な姉にちゃんと愛されていたこと、必要とされていたことがわかったのが、お別れの直前ではあったけど誰かに愛してほしかったフィーニスにとっては幸せだったんじゃないかな、だからもう自分が、父親がこれ以上カルディアを苦しめないように手を離したんじゃないかなと思う。というか思いたい。

フィーニスの最期は愛に包まれていたと、そう信じたいなぁ。

 

 

そして、

【カルディア】

全身に猛毒を宿した少女。胸にはホロロギウム、永遠に脈打つ心臓が埋め込まれていて、それによって生きていられる。

 

冒頭でも軽く言ったけどカルディアだった。

今まで見てきた愛ちゃんの舞台は、個人的には「愛ちゃんがその人の人生を生きてる」そんな感覚で見てたんだけど、今回はなんというか「愛ちゃんの体にカルディアが宿っている」そんな風に感じた。天球儀が本体でフィーニスは操り人形だったっていうのに少し似てるかも。

愛ちゃんがカルディアを演じてるというより、カルディアという存在がもう確立されていて、その魂が愛ちゃんに宿っているというか…うまく言えないけど今までの舞台とは違う不思議な感覚に陥った。

 

 

自分のことを怪物だと恐れず優しくしてくれた、愛してくれたエレイン、姉のように慕ってくれたエティ、ふたりの存在はきっと孤独に生きてきたカルディアにとっては何よりも大切で、失いたくない存在で。なのに自分のせいで自分にとって大切な人だったエレインは死んでしまった。自分にとって大切な人であるエティの大切な人を奪ってしまった。

今でも聞こえてくる怪物と罵る人々の声、「ママの代わりにお前が死ねばよかったのに!」というエティの悲痛な叫び、カルディアは深い傷を負っている、初めはそんな風にしか思わなかった。

 

でも今は、エレインはカルディアが怪物ではないと信じていた訳じゃなくて、人間とか怪物とかそんなことはどうでもいい、カルディアだって自分たちと同じように心がある、そう思ってたんじゃないかなと思う。

カルディアは特別なんかじゃない、自分たちと同じだと、そう思って接してたし、周りの人にもそう思ってほしかったんだと思う。

そして、洞窟にカルディアを閉じ込めるとなったとき、大丈夫だと信じる反面、どこかで死ぬ覚悟もあったんじゃないかと思う。エレインなりに最期までカルディアを愛そうとしたんじゃないかな。(完全なる深読み)

 

 

ルパンがカルディアを攫いに来たとき、ルパンが差し出した手を握ったのは、毒があることを知りながらも躊躇わずに触れてくるルパンの姿にエレインを重ねたからなんじゃないかなと感じた。

大好きだった、信じてたエレインにルパンがどこか似てる気がして、だから信じてみようと思えた。そして一緒に過ごすうちにルパンやみんなが、あのときのエレインやエティとどんどん重なった。だから信じることができた。

 

でもその反面、また自分の手で失うことが怖くなった。

カルディアが恐れていたのは怪物と言われることでも怖がられることでもなくて、自分のせいで大切な誰かが不幸になること。

 

「私がいたら、いつかみんなを不幸にしてしまう」

「私だけ幸せになっていいはずない」

 

"幸せ"に対して敏感になっているカルディアは弱々しくて痛々しくて、エレインが死んだときもしもエティが、周りの人が違う言葉をかけていたら…カルディアを受け入れていたら…そんな風につい考えてしまった。

 

 

自分が傷つくことよりも、自分の大切な人が傷つくことの方がもっと辛い。その傷を自分がつけてしまったのならば尚更痛く苦しいものになる、カルディアは私にそんなことを改めて教えてくれた。

そしてこの考えは演じてる人、長谷川愛さんにも似ている。彼女も自分より他人を優先してしまうことが多くて、カルディアのように他人の痛みや苦しみを背負ってしまう人。

 

「あなたのことを思うと心臓が痛い」とカルディアが言ったとき私も心臓が痛くなった気がした(間違いなく気のせい)

 

痛みに鈍感な方が生きやすいってどっかで聞いたことがあるけど、痛みを知ってるから強くなれるとカルディアが、愛ちゃんが改めて教えてくれた。

ドラマとか本とかでありがちな綺麗事に聞こえるかもしれないけど、実際にカルディアはたった130分の世界の中でも強くなった姿を見せてくれた。

 

ルパンに手を引かれるままに走り、ルパンに盾になってもらっていたカルディアは、大好きな父親の計画を阻止することに協力した。

ヴァンが向けた銃からルパンを庇おうとした。

ヴァンを信じて黄昏に体当たりしていった。

サンの苦しみを理解して毒薬を受け取った。

フィーニスの手を離そうとしなかった。

フィーニスを守ろうと、愛そうとした。

死を覚悟してルパンの隣に座った。

 

 

屋敷にいたままだったら、温かい眠りの中に、優しい眠りの中にいたままだったらきっとカルディアはこんなに強くなっていないだろうし、過去の傷を乗り越えてもう一度誰かを愛したい、誰かに愛されたい、カルディアがそう思ったから変われたんだと思う。

そしてそのきっかけとなったのは間違いなくルパン、インピー、フラン、サン、ヴァン、ショルメだったと思うし、この人たちのおかげでエレインとエティへの後悔も消えたんじゃないかなって、本当の怪物はカルディアの中にずっとあった自分への後悔だったのかなって、毒が消えて、ルパンと手を取り合って微笑むカルディアを見て感じた。

 

そして、アイザックとフィーニスがいたから、カルディアはこの先もきっとルパン達のことを自分以上にずっと大切にしていくんだろうなと、幕が下りたとき、そんな気持ちで満たされた。

 

Twitterの感想にもあったけど、最初は生きてる価値なんてないとでも言いたそうなくらい無機質で無表情で、人形のようだったカルディアが、空っぽだった、真っ白だったカルディアが、ルパン達との日々のなかでひとつひとつ吸収して自分の中を埋めていって、どんどん色を足していって、そんな過程が目に浮かぶかのようにどんどん明るく変わっていく表情もすごくよかった。

最初に屋敷の中で歌ってたときと、最後にルパンの腕の中で歌ってたときが同じ歌とは思えないくらい声色も表情も全く別物で、愛ってこういうものだなぁと思った(?)

 

あと、カルディアに愛ちゃんっぽさを感じることって良い意味で全然なかったんだけど、ダンスするときほんの一瞬だけ愛ちゃんの顔になったときがあって、それはそれですごいよかった(伝われ)

 

 

愛ちゃんが出る舞台を見に行ったはずがそこにはロンドンの世界があって、そこにいたのは孤独の中で自分の存在に苦しんで痛みを抱えながらいつの間にか大切な仲間と明日を生きる為に強くなったカルディアで、長谷川愛の存在はなくて、愛ちゃんが愛ちゃんじゃなかったことにとても感動した。

私の目に映る愛ちゃんが遠くて嬉しかったなぁ。

 

 

東京千秋楽のカーテンコールでカルディア(愛ちゃん?)が「私、みんなに触れたい!」と叫んで拍手に包まれていたけど、私はこの舞台のおかげでカルディアの心に触れられたような気がします。

温かくて優しくてちょっぴり脆くて、でも壊れるたびにどんどん強くなる、そんなカルディアの心を目で見て、耳で聞いて、全身で感じた、そんな気がしています。そして同じように思った人が大勢いた結果の拍手だったんだと思います。

 

Twitterにあった感想に「カルディアが長谷川さんでよかった」といったようなものを見つけてすごく嬉しかったんだけど、私もルパンが良知さんで、インピーが鷲尾さんで、フランが仲田さんで、サンが滝澤さんで、ヴァンが秋沢さんで、フィーニスが星元さんで良かったなと思いました。

そして良知さんも言ってたけど、アンサンブルの方々の存在は本当に重要だった。声と踊りと存在感、それらを駆使して舞台の世界観によりリアリティと奥行きを出してて、アンサンブルなしではこの舞台は成り立たなかったんだろうなぁ。(欲を言えば衣装変わったりすれば更にわかりやすかった場面はいくつかあったけど)

 

終わった今思うのは、コドミュの世界観に触れて、原作も気になってはいるけど、やっぱり私が最初に見る「Code:Realize」がこの舞台で良かったなと心から思ってます。

 

 

 

 

 

 

ここからは余談。

愛ちゃんはこの舞台のオーディションを受けた日の夜、月に1回あるイベントを行い、その中で2018年の目標に「舞台に立ちたい」「お芝居をしたい」という夢を掲げていました。

 

結果がわからない段階でも自分を信じてまっすぐに夢を語る愛ちゃんと、目の前のものにまっすぐぶつかっていくカルディア、ふたりは出逢うべくして出逢ったんだろうなって思う。

 

 

「私たちが出逢ったのは必然なんですから」というサンの言葉を借りると、愛ちゃんがカルディア役を演じることも、このメンバーでコドミュを創り上げることも全部必然だったんだと思う。

 

このメンバーが出会って、コドミュカンパニーが出来上がったその瞬間から新しい世界は、「Code:Realize」は成し遂げられていたんだなと今強く感じている。

(うまく纏めたつもり)

 

とにかく総じて良い舞台でした。

あと3回くらいは見たい。

 

 

おわり。